Early Times
2014 年 5 月 5 日 by SIGN
ゴールデンウイークに特に何もイベントはなく、一日だけやっとできた独りの時間に何をしようかと思ったら、あいにく天気が悪くツーリングに行くこともできず。
工場でバイクをいじることにした。motoSIGN
最近気温が上がってきたせいか、冬の間にセッティングを出していたキャブレターは少しずつその兆候が出始めていた。ガスが濃いために高回転のふけが悪くなり、排気ガスのにおいも生っぽい。音はノーマルマフラーにしてはいい感じだったが、そろそろ調整が必要か。エアクリーナーのエレメントも交換していたので吸気抵抗が増していたせいもあった。
工場にパリダカを入れて作業を始めると、ガソリンの匂いが漂い、ちょっとだけバイク屋気分になる。
「この横切りがなければもっと作業しやすいのになあ」ついこないだまでここが神聖な仕事場だったのに、そんなことを考えるなんてちょっと麻痺してきたのか。それとも今の仕事に馴染んできたのか。そうであればそう願いたい気持ちもある。
訓練校では未だに地に足がつかないような感覚であり、いつもあたふたと走り回っている。職員室では多分僕が一番歩数が多い。
すでに生徒たちの前にいる時が一番落ち着く場所となっている。授業がやっぱり面白いのだ。
そして彼らとの距離が縮まってきたのか、「先生の個人的な意見が聞きたい」と質問されるようになってきた。僕の経験に基づく個人的な意見とは、教科書や彼らが進むべき本流にはないかもしれない。答えていいものかとその時思いつつ、僕の中にも少しずつ芽生えてきている野心があった。かつて写真において持っていたものと似たものだ。
職業訓練校でそんな野心を抱いていいのか。少し考えながら調整していくことも必要だろう。場所が場所だけに、大人なんだから。
このバイクの整備も慣れてきたせいか、思ったより早く仕上がってしまった。キャブのセッティングなどバラしから一時間もかからなかった。
余りすぎた時間を持て余す。外はまだ小雨が降っていた。
暇つぶしにはチェーンのクリーニングが有効だ。メンテナンススタンドで後輪を浮かす。
いくらやってもぐるぐると切りがなく、そんなにきれいになるものでもない。気づくとオイルでぎらりと光るチェーンが見るからに抵抗値が減ってさらさらと回っている。バイクを磨くのが好きな人にとっては最後の砦。露出している部分でありながら走れば必ず汚れてしまうが故にあまり手を入れることはなく、注油だけで当分放っておかれる場所。しかしここを光らせる喜びは独特な満足感がある。
チェーンは交換すればきれいになるけど、使い込んだものを磨いて喜んでいる機械あぶらマニアを楽しむのも古いバイクに乗る意味だ。
しかしそれでも時間が余り、結局小雨の中走り出した。