ちよこおばあちゃんのテーブル
W700×D700×H700
材質:ナラ
塗装:着色カラーワックス、オイルワックス
ストーリー
「がんばらぬことも、老後や小六月」
11月も半ばを過ぎたというのに、納品にうかがったその日は、小春日和の暖かさだった。
俳句が趣味で、あのホトトギスにも作品がのったことがある腕前の持ち主の、ちよこおばあちゃんは、郊外のマンションで一人暮らしをされていた。
納品の際、何か一句いただけませんかとお願いしたところ、詠んでいただいたのが上の俳句。さすが、なかなか洒落ている。
もう10年近く前にご主人に先立たれ、以来一人暮らしだそうだが、住んでいるマンションの別棟には長男夫婦が住んでおり、時々のぞきに来てくれたり、こちらから行ったりで、特に不安はない。月に数回、次男夫婦も泊まりに来る。
また最近は孫娘がひ孫を連れて遊びに来るのが楽しみで、家中ひっかきまわされても楽しくて、帰る時には笑顔でまたおいでと見送ってやるのだそうだ。
気楽気ままに、頑張り過ぎず、何か楽しみを持って老後を生きられれば、晩年もまた小春日和のあたたかさだということか。
そんなおばあちゃんからの注文だったから、趣味の俳句をなんとか織り込みたかった。
歴史を感じさせながらも古くならず、凛として、物語があるたたずまいを形にできたら。
寸法に関しては、お部屋の広さと、次男夫婦が泊まりに来た時に3人で食事が出来る大きさを考慮した。
そして、デザインにはちょっと洒落で、脚に「五七五」のリズムをモチーフにした装飾をほどこして。
帰りがけ、袋一杯のみかんと煎餅をいただいた。
いずれ息子に、そして孫にひ孫に受け継がれていくとしたら、この小六月の日の出来事も伝えたい。