自然木のチェア
W400×D450×H700 SH380
材質:りょうぶ、さくら、なら、とが
塗装:天然オイル、ワックス
ストーリー
高校の教師をしながら、休日、山奥の農園で有機農法や自然農法で野菜を作る。
自然の中にいる川波さんしか知らない僕は、その本分は里山の中にあるような気がしている。
あだ名は「畑の学級長」。
ある日、畑の学級長が、山に生えている雑木で家具が作れないかと言ってきた。
里山とは、昔から人と自然が共生するために出来てきた環境である。
よく人は、田舎の風景を見て、自然だ自然だと有り難がるが本当はそうではない。
大昔からそこに住む人々が、生活の中で築いていったシステムなのだ。
畑で野菜を作り、田んぼで米を育てるためには、開墾し水をひかなければならない。
畑や田んぼ、小川や水路は人が作ったものだ。
生活するために家を建てる。その材料となる木材、屋根を葺く萱、壁に塗る土、ふすまや障子の紙をすく。
家具も作る。
生活の中で使う火までも、あらゆる材料は山から得られる。
また、継続的に得られるように、栽培や、効率の良い採取の仕方を工夫する。
そうして年月を経て出来てきた環境が里山なのである。
山には木が生えている。
もちろんそこにあった植生の木たちではあるが、それぞれに使い道があるもので、人が伐採してはまた芽吹き、選んで使っているうちに、里山の雑木林は形作られていく。
雑木のほとんどは薪や炭といった燃料として使われてきた。
しかし、薪の需要が減ってきた今となっては、雑木林は荒れはじめ、放置されることが多い。
畑の学級長はそんな里山の雑木林で間伐した木を、山小屋で何年も乾燥させ、ため込んでいたのだと言う。
何かに使おうと。
そんな木で椅子を作った。
曲がってねじれた木で組み上げるのは容易ではない。それは僕がこれらの木をコントロールしようとしていたからだった。
製材された材木ばかり使っていると、木への接し方が支配的になっていたのか、自然木を使うと、そんな気もする。
座面と笠木を削る作業は川波さんにやってもらい、なんとか完成した。
畑の学級長は、この椅子を自分の娘にプレゼントする、と言っていた。