洗面所のハイチェア
W290×D330×H770 SH530
材質:タモ(座板、笠木)、ホワイトアッシュ(脚)
塗装:天然オイルワックス
ストーリー
SIGNのおとなりに住んでおられる老夫婦から、椅子を作って欲しいと頼まれた。
こちらに引っ越してきてから何かとお世話になっていて、僕も、生まれて初めてと言ってもいいくらいの親しいご近所付き合いをさせていただいている。
いきなり外からやってきて、こんな騒々しい、怪しい仕事を気兼ねなくできるのも、このご夫婦のおかげであると言えるだろう。
僕のような人間を面白がってくださっているようだ。お邪魔すると、立ち話が長話になることが多い。
家庭菜園をされている奥様から、季節の野菜をいつもたくさんいただく。
ご主人との二人暮しではとうてい食べきれないほど収穫できる本格的な畑をされていて、僕もこちらに引っ越してきた時はスペースもあるし、野菜でも作ろうかと思っていたが、こうしていただくことが多いので、野菜や果物は貰うことに徹しようと決めた。
そしていただく野菜は買うよりおいしいので。
そんな奥様から洗面所で使う椅子を頼まれたのだ。
洗面所での立ちっぱなしや前屈みの姿勢がつらくて、通販で鉄のパイプ椅子を購入されたらしいのだが、予想以上に重くて使いづらいという。だから木で、軽くてコンパクトなハイチェアを、ということだった。
立ち上がりやすい高さと、必要十分な座面の広さ。
用途からするとハイスツールでもよかったのだが、奥様のご希望で小さな背もたれを付けて。
そして、床を傷つけたくないということだったのでX型の畳ずり(この場合そうよぶのか?)を付けた。だったらいっそ軽量化も含めて細い脚のウィンザースタイルに、と考えた。
脚の材には粘りのあるアッシュ、座板と笠木にはタモを使用した。色の変化があって可愛くなったかな。
いつもお世話になっているお返しになるのか、それとも野菜と同じく仕事までいただいてしまったのか、なんというか楽しいご近所付き合いだ。
僕の作ったものを親しい方に使っていただくという喜びもある。