今日の作業は一日サンディングだった。
サンディングというと、日本語的にはいわゆるペーパーがけか、普通はオービタルサンダーやランダムサンダー、もしくはディスクグラインダーなどの電動工具を使用した磨き工程を指す言葉だが、西洋においては「磨く」だけではなく、「削る」ことも含めた成形工程もサンディングらしい。もちろんそれには紙ヤスリも電動工具も使うのだが、木工の技法という意味合いでのサンディングとは、木工ヤスリを使った手作業による成形のことをそう呼ぶ、というのを本で読んだことがある。
曲面の加工やテーパー処理なんかは、特に日本人は刃物を使って成形するのを美徳とするところがある。鉋、小刀、ノミなどなどを駆使して、木繊維と格闘するのだ。それに対し西洋では、ためらいなくヤスリでごりごりやりはじめ、だんだん細かくしていって、最後にはぴかぴかに磨きあげる。もちろん仕上がりや表面の耐久性を比較すると、鉋などの刃物で仕上げた方が美しくて強いのだが、現代の塗装法を考えると結局最後は素地調整をしなければならず、100分の1ミリの差を気にしなければ、最初からヤスリ、はむしろ合理的なのかも。
しかし、こんなに電動工具が普及し種類も充実している時代に、どちらも手作業で、好んでそれらを選ぶ人はやっぱり職人気質でなにかしらこだわりのある人なのかもしれない。
で、今回の仕事ではこの木工ヤスリを使ったサンディングを選んでみた。
いつもならトリマーや電気鉋でおおまかに成形し、グラインダーで荒削り、そのあとランダムサンダー、紙ヤスリで仕上げて終わり、なのだが、ちょっと時間がかかってもやってみたくなったのだ。
電動工具を使うと早い反面仕事が荒くなり、ホコリがすごいのでマスクをする、木屑が飛び散って目に入るのでゴーグルをする、音がうるさいので耳栓をする、で工場はどこもかしこもまっ白け。いいのか悪いのか。
しかし、木工ヤスリは道具の数としては大から小の数本で、作業中はごりごりいうだけでとても静かだし、木屑も作業台の周りだけで飛び散らないのでマスクもゴーグルもいらない。音楽を聴きながら淡々と作業ができた。もちろん、スピードは遅いし、引っくり返してはクランプやバイスで固定しなければならないめんどくささもある。肉体的な力技でもある。
前に何度か試みたことがあったのだが、時間がかかってしょうがないので、ヤスリは飾ってあるだけだった。
でも久しぶりに手にして、僕は気に入ってしまった。これは楽しい。刃物より僕には向いてるかも。
人によってはものすごくつらい作業かもしれないが、摩擦系の作業が好きな僕にとっては、時を忘れて淡々と続けられる。
いろんな種類の高性能のヤスリを探す楽しみもできた。そりゃちょっとやばいか。